不思議の国の…
不思議な人を見た。
横断歩道で一心不乱に踊っている、
わたるわけでなく、誰かを待っているわけでもなく。
手招きするようなその指先が、妙に記憶に残った。
不思議な人を見た。
頭からつま先まで外に出ている肉体が見えない。
完全紫外線シャットアウトの帽子に
長袖シャツ、軍手。
長ズボンにスニーカー。
顔にはタオルを巻いている。
銀行強盗に入っても、誰だかわからない格好である。
とにかく一心不乱に歩いている。
二人連れが多いが、会話しているのを見たことがない。
最近増殖している。
不思議な人を見た。
運転中、隣の車を見たら、なんとも懐かしい車であった。
かなり昔のクラウンだっただろうか。
運転席の座席が、助手席とつながっているタイプである。
ふと気づくと、運転手がいない!
いないと思ったら、帽子だけ出ていた。
おじいさんが、いたのである。
完全にシートに「はまって」いた。
彼の視界はどうなっているのだろうかと、妙に気になった。
周囲を車が追い抜いていった。
確かに安全運転ではある。