名優

家主

2008年12月05日 00:18

緒形拳さんが出ているドラマ「風のガーデン」をみた。

亡くなってだいぶんたつのに、今初めて見る演技があるというのは
不思議な気がする。
それにしても、自身がガンに苦しんでいながら
ガンで余命幾ばくもない息子を持つ父を演じていたのは
皮肉というより、役者としてのすごみを感じる。


名優というのは、こういう人のことを言うのだろう。


ゴジラという怪獣がいる。
生まれたのは1954年。第1作である。
のちに、ワルイ怪獣をやっつける「正義の味方」のようになっていったのだが、
当初は水爆実験の影響を受けて、
太古の生き物が放射能を帯びて現代によみがえったという
「恐怖映画」であった。

テレビの再放送で、それを見たワタシは、
吸い込まれるように「白黒画面」に見入ってしまった。


東京湾から首都に上陸したゴジラは、
電波塔に接近する。
なぜか知らないが、タワーの上で、アナウンサーが

「ゴジラがやってきます!」

と実況しているのである。
そして、

「もうこれ以上お伝えすることはできません。さようなら」

と言ったかどうかは定かではないが(ワタシの中ではそういうストーリーになっている)
タワーは、アナウンサーの叫び声とともに、ゴジラによって倒されるのである。
(ワタシの記憶の中ではそうである)

このアナウンサーはなぜ逃げなかったのか…とか、
技術の人たちも踏みつぶされたのだろうか…などということは
全く考えなかった。
このアナウンサーの仕事意識に感動したのである。

人間、自分がどこかで社会に対して少しでも何かの役に立てればと、
必ず心の片隅で思っているはずだ。


コドモ心に、将来はアナウンサーになって
首都をおそうゴジラの様子を実況し、社会のお役にたとうと心に誓ったのであった。
振り返ってみると、最初にこの商売を「商売」と認識したのは
このときが最初かもしれない。



ま、名優の演技の話のあとで引き出しをあけて持ち出すほど
大した理由ではない。


人間、そんなものなのである。