「コ」と「チ」の違い
筒井康隆さんの初期の短編に
「腸はどこへ行った」というのがある。
あるときから「大きな方」をしなくなったと思ったら
腸が「メビウスの環」の立体版である
「入れ子」になってしまい、
「ウンコ」がどこかへ消えてしまうというものであった。
どうしてこんな話になったかと言うと、
三叉路のど真ん中に犬のフンが落ちていたのである、
悲劇はその直後に起こった。
サングラスをして長い赤毛の美人(だと思うがサングラスで顔が見えなかった)が乗った
真っ赤なスポーツタイプの車が
しなやかにその三叉路に差し掛かった。
そして・・・
フンでしまったのである。
思い起こせば子供の頃、「ウンコ」という単語が好きだった。
いや、今その単語を連呼していたら、明らかに変態である。
しかし、皆さんご存知のように子供は「ウンコ」が好きなのである、
しかし、当時私は「ウンコ」と「ウンチ」は別なものとして扱っていた。
「ウンコ」はフォーマルなもので、「ウンチ」はあまり表に出さないもの・・・。
だから「ウンコ」は連呼したが、「ウンチ」は口に出来なかった。
「コ」と「チ」で微妙にニュアンスに差があったのである、
最近、本を読んで驚いた事がある。
「ウンコ」というのは、食べたもので消化し切れなかった「カス」だと思っていたら
ちがったのである、
9割が水で、次が胃や腸の死んだ細胞、そして消化を助けてくれる細菌の死骸。
食べ物の残渣は一番少ないのだそうだ。
人間、食べたものはほとんど「身」にしていると言う事なのだろうか。
やはりあれはからだの為に戦ってくれた勇者達が遺したもの。
「ウンコ」だったのだ。
有難い事である。
そういえば・・・
学生の頃、合宿で牧場に行ったら
「馬の糞を踏むと足が速くなるらしいよ」
と力説しているやつがいた。
そいつは期せずして自ら、糞をフンだ。
しかし、彼がフンだのは、馬フンではなく、牛フンだった。
「コ」ではなく、「チ」のほうだったのである。
あまりに悲惨だったので、その後しばらく、「フン」話はしなくなった。