おやじ
1年もブログから遠ざかってしまった。
その間、いろいろなことがあった。
沖縄では高校総体があり、興南高校が甲子園で春夏優勝し、
年が明けたら、東日本大震災である。
震災後、親の様子を見に東京に行ったとき、地元のうなぎ屋に行く機会があった。
うなぎ屋の名は
「さか井」
という。
店の内部に、手作りで作った新潟・山古志村の小学校(自分が通っていた)の模型を飾ったり
自分の商売は「米」が基本だからと、カメラマン濱谷浩氏の「田植え女」という
モノクロの写真を飾ったりする、癖のあるおやじである。
開店早々に入ったせいで暇だったせいか、世間話をする時間があった。
「最近は『小粋』な女性がいなくなったね」
とおやじ。
「『粋』なヒトはいるけど、『小粋』なヒトはいなくなっちゃったなあ」
「『粋』と『小粋』はどう違うんですか?」
「『小粋』な女性はねえ、一つ一つのしぐさが“憎らしい”んだよ。
『粋』なヒトはまだ残っているけど、『小粋』な女性は消えちゃったねえ」
憎らしいしぐさって、どんなしぐさだろう…と考えていると
「僕はねえ、『嫋(たおやか)』って字が好きなんだよね。
女偏に弱いとかく。でも弱いわけじゃないだろ」
嫋やか
…しなやかでやさしい…
最近、しなやかさって見なくなったよなあ。
おやじの店には、先日亡くなった団鬼六さんが足しげく通っていたそうだ。
亡くなる直前は、食事のすべてがおやじが焼く「うなぎ」だったという。
「作品は過激だったけどね。ご本人はシンシだったよ」
店の中で、どんな会話が交わされたんだろう…
こだわりが店になったような「さか井」の店内が、一層濃密に思えた。