おやじ

家主

2011年05月17日 22:09

1年もブログから遠ざかってしまった。
その間、いろいろなことがあった。

沖縄では高校総体があり、興南高校が甲子園で春夏優勝し、
年が明けたら、東日本大震災である。




震災後、親の様子を見に東京に行ったとき、地元のうなぎ屋に行く機会があった。
うなぎ屋の名は

「さか井」

という。



店の内部に、手作りで作った新潟・山古志村の小学校(自分が通っていた)の模型を飾ったり

自分の商売は「米」が基本だからと、カメラマン濱谷浩氏の「田植え女」という
モノクロの写真を飾ったりする、癖のあるおやじである。


開店早々に入ったせいで暇だったせいか、世間話をする時間があった。


「最近は『小粋』な女性がいなくなったね」

とおやじ。

「『粋』なヒトはいるけど、『小粋』なヒトはいなくなっちゃったなあ」

「『粋』と『小粋』はどう違うんですか?」

「『小粋』な女性はねえ、一つ一つのしぐさが“憎らしい”んだよ。
 『粋』なヒトはまだ残っているけど、『小粋』な女性は消えちゃったねえ」


 憎らしいしぐさって、どんなしぐさだろう…と考えていると


「僕はねえ、『嫋(たおやか)』って字が好きなんだよね。
 女偏に弱いとかく。でも弱いわけじゃないだろ」


 嫋やか
 
 …しなやかでやさしい…
 
 最近、しなやかさって見なくなったよなあ。


 
 おやじの店には、先日亡くなった団鬼六さんが足しげく通っていたそうだ。
 亡くなる直前は、食事のすべてがおやじが焼く「うなぎ」だったという。

 「作品は過激だったけどね。ご本人はシンシだったよ」

 店の中で、どんな会話が交わされたんだろう…
 こだわりが店になったような「さか井」の店内が、一層濃密に思えた。