前の持ち主
荒川静香が見事金メダルを取った。
このオリンピック、何かが不思議だと思っていたら、日の丸が揚がる表彰式どころか、どの競技の表彰式であっても一度も見ていなかったのである。
開幕前の「あおりが派手だっただけに、毎日入ってくるニュースがいっそう悲しさを煽った。
このまま終わって、メダルゼロとかになったらきっと白いシラケ鳥が飛ぶ
「鳥のオリンピック」
になったに違いない。
それだけにこのメダルでほっとしている関係者は多いのではないかと思う(特にマスコミに)
メダルは新しいものだが、前のオリンピックの金メダリストというのが私は結構気になる。
4年に一度の五輪金メダリストのその後には、2種類ある。
「連覇を狙う」人と
「花道にする」人である。
荒川はどうもプロに転進して、五輪からは引退するようである。
初めてのものというのは何につけても思い出深いものだが、私の最初の車もすごかった。
買ったときの値段は5万円。
修理に数倍の金がかかった。
エンジンはすごく元気であった。
ただ、まもなく後部トランクが錆びて
穴が開いた。
さっそく、ガムテープで修繕した。
次に
助手席の窓が中途半端な位置で動かなくなった。
さっそく、強引に上まで引き上げ、二度とあかないように封印した。
まもなく、
助手席のドアそのものが開かなくなった。
特に誰が乗るわけでもなかったので放っておいた。
そのうち、
運転席のドアが開かなくなった。
これには困った。
仕方なく、壊れている助手席の窓を開けて、窓から侵入した。
すると、強引に入ったために
ルームミラーを蹴飛ばして破壊した。
仕方ないので、ガムテで貼り付けた。
ある時、出張がはいったので、当時飼っていたインコを人に預けようと走っていると、
前の車が急ブレーキをかけ、鳥かごがひっくり返り、餌が散乱した。
鳥は平気だったが、一週間して久々に車のドアを開けたら、助手席の足元に
青々としたアワとヒエの芽が出ていた。
しかも
15センチくらいに育っていた。
水が漏れていたのである。
なかなか想像できないと思うが、本当にはえていたのである。
さすがにショックだった。
2年も乗っただろうか。
当時あった中古車販売店が
「お買い上げいただいた方には、
どんな車でも現在の車を1万円で引き取ります」
といっていたので、実際に行ってみた。
到着にブレーキは要らなかった。
放っておいてもタイヤまわりがおかしくて止まったのである。
店内に乗り入れたら、ガムテでムリに貼り付けてあったフェンダーミラーが落ちた。
店員の顔が凍りついていた。
しかし私はその車を一万円で引き取ってもらった。
エンジンは最後まで元気だった。
私は前の持ち主の顔を思い浮かべた。
その顔は笑っていた。