目があった話

家主

2006年06月07日 20:31

渋滞に巻き込まれたとき、隣の車に目をやると、向こうもこっちを見ていたりする。
こういうときはどんな顔をしていいものか困る。

昔、電車に乗り遅れた人が、目の前でドアが閉まると、一様に複雑な笑顔になった。
あんな時は絶対に目をあわさないものだ。

阿吽(あうん)の呼吸という言葉がある。
「阿」は口が開いた状態で、「吽」は閉じた状態。
微妙な気持ちがぴったりとあう。アイ・コンタクトなどはまさにそうであろう。

デンマークに行った時、ハイウェイを走った。
小さい国だが、町と町の間が離れているから、移動するときには猛スピードを出す。
乗っていた車が日本製だったが、スピード表示をふと見ると

170㌔!

そのとき、会話が途絶えた。

気まずい雰囲気が続き、何とかその場を打開しようと、運転していたデンマーク人の女性に話しかけることにした。
走っている道は3車線。

「真ん中の車線はどちらの車線なんですか?」
「ああ、あれは両方の追い越し車線よ」

そのとき、会話が途絶えた。

150㌔で走っている車を追い抜くということは、それ以上のスピードが出ている。
相手が同じ速度で走ってきて、同時期に追い抜くことを考えたとしたら…。

笑顔が消える、3秒前の出来事であった。

こんなときは人間、目と目を合わせて黙るしかないのである。