土方　浄の「スコアブックをもう一度」

我輩の名はコテツである。
別に我輩が名前をつけたわけじゃあない。


気がついたらそう呼ばれていたんだから、我輩のせいではないが、
呼ばれると、自分でも気がつかないうちに、振り向くから、まあ気に入っているんだと思う。

それにしても散歩がしにくい世の中になった。


ここは、いま首長選挙真っ最中の某自治体にあるジャングルである。
いや、正確に言うと、ジャングルではないらしい。
我輩の目にはジャングルに見えるが、人間はここを「公園」と呼んでいるらしい。

吾輩でも首を突っ込むとダニをうつされそうなところに、
人間の子供が入れるはずがないと思う。
最近、人間の世界は物騒な事件が多いらしいが、
公園をこんな状態にしておいて、選挙戦で理想ばかり言っていても仕方なかろう。

何かが起きてから騒ぐのではなく、
起きる前に子供が安全に遊べるようにしてやればいいと思うのだが・・・。
我輩も、そのほうが思い切り走り回れるのである。

どうも人間はあまり自分が作ったものがどうなっているか、注意しないようだ。
我輩だって、糞をしたら、必ず砂をかけるよう努力している。

こんなに努力をしているのに、飼い主の話に耳を立てると、
どうも我輩の縁談は上手くいっていないらしい。
先方の発情期が過ぎてしまったのだそうだ。

我輩たち犬は、一定の期間だけそういう気分になるのだが、
人間の中でも、「教授」といわれる種類には、
電車に乗ると発情期を迎え、手に鏡を持ったり、メスの尻に手が行く種族がいるらしい。

吾輩たちも、電車に乗るのは注意しようと思う。