2006年02月22日
ウルシうるわし
これはコテツである。
きのう、ジャズピアニストの屋良文雄さんのお店でシツゲイカの原田城二さんにお会いした。
お分かりとは思うが、シツゲイカとというのは漆芸家のことでって、イカの種類ではない。
そして原田さんの作品を見て、私は自分が持っていた固定観念がいかにつまらないものであったのかを思い知らされた。
原田さんは京都生まれの、東京育ち。
秋田で漆芸家として活躍し、その後沖縄に拠点を移し、
本部に工房を構えて作品を作られている。
那覇の久茂地で個展をしておられると聞き、早速行って見た。
イヌがいた。
驚くなかれ、これ「漆器」なのである。厳密に言えば「器」ではないが、粘土で作ったイヌをベースに、和紙と麻の布と漆(うるし)でイヌを作り、その過程で粘土の型は割って取り出すのだという。
だからこの作品、非常に軽い。
実物は写真よりリアルである。原田さんの愛犬がモデルだそうだが、これを見かけて、ライバルと思ったのか「ウウウ…」と威嚇していたそうだ。
単純な私は、漆器といえば「赤」と「黒」というイメージが焼きついていた。
今は、さまざまな顔料を塗りこむことで多彩な色を表現出来るそうである。
例えばこの蝶。
赤といっても、ずいぶん明るい色合いである。
この色を出せたのを原田さんは「偶然」とおっしゃる。
たまたま太陽の下に10分ほど置いたところ、明るい色合いが浮かんだそうだ。
強い日差しを送る「沖縄の太陽が生んだ色」なのだそうだ。
原田さんはまた、こんなものを材料に???と思うようなもので作品を作っておられる
これは椰子の実を使った器。
一つ一つのお椀の大きさが微妙に異なり、それぞれが「自分を主張」していて面白い
これは、はがれて落ちたアレカヤシの「皮」だそうである。
最初なんだかわからなかった。
これを「面白い」と思う感性がスゴイ。
私なら迷わずステル。
作品には生き物をモチーフにしたものが多い。
しかも躍動感がある。
そうした作品の中に、自然に対する作者の暖かさを感じる。
「ウルシって、人間で言えば怪我したあとに出来るカサブタみたいなもの。
怪我を治さなくちゃいけないから、地域によって粘りや質に違いがある」
と、原田さんはオッシャる。
秋田では乾くのに1年もかかったタイ産のウルシが沖縄でははるかに早く乾く。
風土が風土に合った作品を生むのだそうだ。
この展示会を見に行って、目からウルシが・・・いやウロコが落ちた。
26日まで那覇市久茂地の青砂工芸館でやっているので、ぜひ目からウロコを落としに行ってほしい。
そこでコテツである。
イヌが舌を出すのは仕方がないが、たまに写真を撮ってやろうとすると
特別長く「だら~」と舌を出す。
やつはきょうも「お座り」をしなかった。
Posted by 家主 at 19:54│Comments(0)
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